世界最高の起業家、イーロン・マスクの挑戦。

「世界最高の起業家」と謳われるイーロン・マスク。彼が挑戦する革新的なプロジェクトを10回に渡り、研究します。

Teslaの最高傑作、「Model 3」

第6回目は、前回に引き続き電気自動車企業の「Tesla(テスラ)」について述べるが、今回は、先日Teslaが発表した一般消費者向けのセダン車『Model 3』の特徴とその評価、また問題点について詳しく見ていく。

 

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Model 3の特徴と価格

 

Teslaは2017年7月28日、新型セダンの『Model 3』の出荷を開始し、予約注文していた最初の30人に納入した(最初の30人に選ばれたのは主にテスラ関係者ではないかと言われている。これは実車を本社近くに置くことでトラブルが発生した際に迅速に対応し、その後の生産に反映できることが理由ではないかと見られている)

同モデルの予約台数はすでに50万台を超えており、テスラは生産台数を8月に100台9月に1500台、さらに12月には2万台とすることを目指している。

 

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マスクは当初の約束どおり、Model 3を3万5000ドル(約387万円)で発売した。日本での販売価格は納車時期の為替レートに輸送コスト、その他諸経費が加算されると当社ホームページに記載があるため、最低価格はこの値段よりも多少高くなることが予想される。

また、Model 3の主な特徴として

  • 1回の充電での航続距離が345km
  • 6秒以下で100km/hまで加速
  • 5人乗り
  • 安全性評価で5つ星
  • オプションで自動運転機能を追加可能
  • スーパーチャージャー(アクセルがかかりやすい・軽量)

が挙げられる。

 

そして、内装のデザインにも他とは違うこだわりがある。Model 3は一般的な乗用車が持つメーターパネルがなく、センターコンソールの部分に大きなディスプレイを配置

全ての情報がこのディスプレイに表示され、エアコンの温度調整やマップ表示等もここから行う。

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また、着目すべきは走行可能距離1マイルに対する車両価格である。車両価格が4万4000ドルの長距離バッテリー使用の場合、1マイルあたりの車両価格は142ドル。これは他のEVに比べて最も安い単価となっている。

 

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充電に関しては、テスラ独自の急速チャージャー、「スーパーチャージャー」が利用可能。30分の充電時間で、ベースグレードがおよそ210km走行分、ロングレンジグレードがおよそ275km走行分を充電できる。

 

また当社は最初の出荷分の納車と共に、Model 3に追加できるオプションとそれらの価格を公開した。購入者がこれらを希望した場合、Model 3にかかる費用は、どのくらい増えることになるのだろうか。

 

Model 3は1回の充電での航続距離が220マイル(約345km)だが、310マイル(約499km)の長距離用バッテリーにアップグレードしたい場合には9000ドルがかかる。また、オートパイロット(自動運転)機能を付けるには5000ドルを上乗せする必要があるほか、「完全自動運転」技術の提供が可能になった時点でそれを導入するには、追加で3000ドルを支払う必要がある。

 

オプションを付けた場合の具体的な購入額は、次のとおりだ。

 

  • 基本価格(航続距離220マイル):  3万5000ドル
  • 航続距離310マイルにアップグレード: 4万4000ドル(基本価格+25%)
  • オートパイロット機能を搭載: 4万9000ドル(基本価格+40%)
  • 完全自動運転機能にアップグレード: 5万2000ドル(基本価格+49%)

 

購入者はModel 3を予約する際、バッテリーをどちらにするか選択する必要がある。これについては、多くが航続距離310マイルの「長距離モデル」を選ぶと見られる(テスラから出た2番目の車種であるModel Sは近年のEVでは他社に比べ一番航続距離が長い点が特徴的だが、その航続距離が310マイル)。そして、その際の4万4000ドルという価格は、モデル3の売り上げを左右することにはならないと考えられる。

 

さらに、バッテリーを航続距離310マイルにした人の多くは、5000ドルを払ってオートパイロット機能を付けると予想される。その理由としては、長距離を走る人の方が自動運転機能を使う機会が増えること、搭載した方が車の残余価値が高まることなどが挙げられる

 

 

テスラのウェブサイトによると、航続距離310マイルのバッテリー搭載で注文を受けた分については今年11~12月に納車。その後、来年1月〜3月には基本価格の3万5000ドルで予約を受けた分について生産・納車する予定だ。

 

Model 3の課題

しかしなんと言ってもTeslaの課題は大量生産にある。

同社のイーロン・マスク最高経営者(CEO)は報道陣の前で、同社が少なくとも向こう6か月の「生産地獄」を経験すると述べた。そして、その後に行った従業員を前にしたスピーチの中では、この期間を9か月に延長した。同社が当初計画しているモデル3の生産台数は、恐ろしく少ない。先ほど述べたように8月は100台の予定だ。

 

「飛躍的な生産数の増加」「Sカーブ(型の増産計画)」といった表現を聞いたことがない。

自動車部品の供給は過去25年間、無駄のない、「必要数ぴったりの」在庫を保つ習慣を身に付けてきた。そうすることで、急激な増産とその後の生産量の維持を可能にしてきたのだ。

こうした増産計画を図で示すなら、生産量はマスクが言うような「S字」ではなく「ルート(根号)」の一部のようになるはずだ。そして、世界中のどの大手自動車メーカーも、後者の図を描くような形で生産数を引き上げている。なぜかと言えば、それが最もコスト面で無駄がないからだ。

 

テスラを除いた各国の自動車メーカーは、いずれも自動車業界の低迷による打撃を何度も経験している。そのため、できる限り迅速に生産台数を最大限に引き上げることが可能な体制の維持は、各社にとっての必須事項となっている。

 

つまり、S字型の生産戦略をとるマスクの計画は、本格生産を開始するにあたって最も資金面で無駄が多いということになる。

 

モデル3は今後、他に資金を頼らない存在になるか、あるいは外部からの資本調達を可能にするものにならなくてはいけないということだ。そして、この点において時間は最も重要な要素となる。

さらに、テスラにとっては現金保有額も重要な数字だ。今年3月末時点では40億ドルとされており、この額が6月末時点でどう変わっていたのか、非常に興味深いところだ。マスクは今年1月からモデル3の発売までに20億ドルを費やしたことを明らかにしている。第2四半期中には資金調達を行っていないことから、テスラは同期の決算でキャッシュフローのマイナスを報告すると考えるのが妥当といえるだろう。

そしてやはり、その懸念は的中した。

当社は2025年償還の無担保優先債を15億ドル(約1663億円)発行する計画を発表したのだ。

調達資金は、最も手ごろな価格の「モデル3」関連の支出を支えるためバランスシート強化などに充てる。ブルームバーグのデータによれば、同社が起債するのは転換社債以外では初めて。  

同社は4-6月期(第2四半期)にモデル3の生産能力強化やバッテリーの増産に投資を行い、フリーキャッシュフロー(純現金収支)は過去最大の11億6000万ドルの赤字を計上。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は先週、業績発表後の投資家との電話会議で、株式ではなく社債の発行を検討していると明らかにしていた。

 

 

同社の発表を受け、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は同社の見通しを「ネガティブ」で確認。社債格付けは投機的(ジャンク)等級の「B─」とした。同社の長期信用格付けも「B─」で据え置いた。

しかしS&Pは声明で、年内の「モデル3」ローンチや「モデルS」と「モデルX」の増産によりコストが予想より膨らんだ場合、格付けを引き下げる可能性があるとした。

 

Model 3は多くの人にとって非常に魅力的な製品であることは疑いないが、会社と株主、そしてマスク自身にとっては苦しい展開を強いられることになる。

 

今後彼がどのような販売戦略をとるのか、注目したい。

 

次回予告

 

次回はTeslaの今後の新しい製品、そして驚くべき噂について述べていきたい。

 

 

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